飛行機に乗るときによく聞く、「スターアライアンス」「ワンワールド」「スカイチーム」。皆さんは何となく「乗り換えが便利」、「マイルが貯まる」などというイメージがあるかと思いますが、分かりにくいですよね。
この記事では、この航空連合・アライアンスの概要と、どのようなメリットがあるかを解説します。
航空連合(アライアンス)とは何か
航空連合(以下、アライアンス)とは航空会社間で組織する連合組織のことです。同一連合内の会社ではコードシェア便やマイレージサービスの相互乗り入れなど利用者に利便性を図りアライアンス外の航空会社との競争を有利にすることが目的です。
また、航空会社も燃料や部品の共同購入や自国外の就航地での整備、受付業務などの協力を得ることができ独自で海外展開する場合と比べて大きいメリットを得ることができます。
アライアンス成立以前
1990年代ごろから一部航空会社間でのマイレージサービスの相互乗り入れやコードシェア便の運航など業務提携が行われてきました。これは1970年代の終わりにアメリカで航空規制の緩和が行われてきたことが背景にあります。
航空産業は第二次世界大戦終結後、航空機の大型化やジェット機の普及、ボーイング747の登場により一気に拡大しました。しかし、航空産業はその特殊性から国の関与が強く、多くの航空会社は国営や半官半民のような形で国のバックアップを受けて発展してきました。
これは安全に関する規制に留まらず民間航空会社の参入規制、航空運賃、新規路線の設立など多岐にわたり、あらゆる面で産業の保護を図ります。企業体力がなかった黎明期の航空会社の成長を促進した一方で、競争原理が働かず航空運賃の高止まり、経営の非効率化につながります。
ところがこの流れを大きく変えたのが1978年にアメリカで始まった航空規制緩和です。カーター政権は非効率な航空産業の改善を図るため競争原理を導入する大改革を行い、新規航空会社の参入促進、航空運賃の自由化、各種補助金の削減などが行われました。
この大改革が行われた結果、当時世界最大の航空会社であったパンアメリカン航空が倒産するなどの副作用があったものの、航空運賃の低減、経営の効率化、サービス水準の向上が達成されました。
その後、規制緩和の流れは世界的に広まり世界中の航空会社は競争にさらされることとなりました。
アライアンスの成立
このような流れの中で自社顧客のサービス強化に動き始めました。特に航空会社は自社顧客に対してマイルなどを付与してロイヤリティーが高い優良顧客の囲い込みをはじめ、その後競合航空会社との業務提携を通じたコードシェア便やマイレージサービスの相互乗り入れなど顧客サービスの強化を図りました。
その後提携内容が順次強化されていき、1997年に世界で初めて「スターアライアンス」というアライアンスが設立されました。
このアライアンスは2社間の業務手系をより広範に拡大したもので、マイルの相互乗り入れに留まらずチェックインカウンターや空港ラウンジの共用化、上級会員相互優遇など多くのメリットを顧客に提供するようになりました。これは優良会員を囲い込むことに加えて、規制緩和で生まれた格安航空会社(LCC)の差別化を意識したものでした。
また航空会社にとっても自社の優良顧客に対してのサービス向上を図るだけでなく、自社のコスト低減にもつながります。というのも航空会社が海外路線に就航する際には莫大な投資が必要になります。これは現地事務所の立ち上げ、整備施設は当然のこと、受付スタッフなど多岐にわたります。
アライアンスに加盟することにより現地のアライアンス航空会社にこのような業務を委託することができ安価なコストで自社便を飛ばすことができるようになったのです。皆さんも海外から日本へ帰国する際に自分が登場する航空会社とは別の会社の制服を着たスタッフに案内されたことはないでしょうか。
世界三大アライアンスとは
現在、3つの世界的なアライアンスが存在しており、国内大手の日本航空(JAL)と全日空(ANA)も所属しています。
スターアライアンス(Star Alliance)
スターアライアンスは1997年に設立された世界で初めてかつ世界最大の航空連合です。全26加盟航空会社は190国以上の国、1300以上の空港に就航しており広範なサービスを提供しています。(2020年9月現在)
ANAもこのアライアンスに加盟しており、搭乗時に「スターアライアンスメンバー」などという言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。
世界で一番の加盟数ですが、アジアでの加盟航空会社が後述のアライアンスが多い一方でロシア・CISおよび南米の航空会社が加盟しておらず同地域は手薄となっています。
スターアライアンス加盟航空会社
航空会社名 | 英名 |
アドリア航空 | Adria Airways |
エーゲ航空 | Aegean Airlines |
エア・カナダ | Air Canada |
中国国際航空 | Air China |
エア・インディア | Air India |
ニュージーランド航空 | Air New Zealand |
全日本空輸(ANA) | All Nippon Airways |
アシアナ航空 | Asiana Airlines |
オーストリア航空 | Austrian Airlines |
アビアンカ航空 | Avianca |
ブリュッセル航空 | Brussels Airlines |
コパ航空 | Copa Airlines |
クロアチア航空 | Ctoatia Airlines |
エジプト航空 | Egypt Air |
エチオピア航空 | Ethiopian Airlines |
航空会社名 | 英名 |
エバー航空 | EVA Air |
LOTポーランド航空 | LOT Polish Airlines |
ルフトハンザドイツ航空 | Lufthansa |
スカンジナビア航空 | Scandinavian Airlines System |
深圳航空 | Shenzhen Airlines |
シンガポール航空 | Singapore Airlines |
南アフリカ航空 | South African Airways |
スイスインターナショナル航空 | Swiss International Airlines |
TAPポルトガル航空 | TAP Air Portugal |
タイ国際航空 | Thai Airways Internatonal |
トルコ航空 | Turkish Airlines |
ユナイテッド航空 | United Airlines |
スカイチーム(SkyTeam)
2000年に設立されたアライアンス。加盟19社はアライアンス第2位の規模。(2020年9月現在)
南北アメリカ大陸に強く、北米最大のデルタ航空のほか、中南米ではアルゼンチン航空、アエロメヒコ航空が加盟しており、南米大手のLATAM航空も今後加入予定。
加盟航空会社一覧
航空会社名 | 英名 |
アエロメヒコ航空 | Aeroméxico |
エールフランス | Air France |
大韓航空 | Korean Air |
チェコ航空 | CSA Czech Airlines |
KLMオランダ航空 | KLM Royal Dutch Airlines |
アエロフロート・ロシア航空 | Aeroflot Russian Airlines |
エア・ヨーロッパ | Air Europe |
ケニア航空 | Kenya Airways |
アリタリア・イタリア航空 | Alitalia |
航空会社名 | 英名 |
タロム航空 | Tarom Romanian Air Transport |
ベトナム航空 | Vietnam Airlines |
チャイナエアライン | China Airlines |
中国東方航空 | China Eastern Airlines |
アルゼンチン航空 | Aerolíneas Argentinas |
サウディア | Saudia |
ミドル・イースト航空 | Middle East Airlines |
厦門航空 | Xiamen Air |
ガルーダインドネシア航空 | Garuda Indonesia |
ワンワールド(oneworld)
1998年に設立された第3位のアライアンス。加盟航空会社は14社と三大航空連合の中では一番小規模。
2020年4月まで南米最大規模の航空会社であるLATAM航空が加盟していたが、デルタ航空の出資を受けたことによりワンワールドを脱退した。
加盟航空会社一覧
航空会社名 | 英名 |
アメリカン航空 | American Airlies |
ブリティッシュ・エアウェイズ | British Airways |
キャセイパシフィック航空 | Cathay Pacific Airways |
フィンエアー | Finnair |
イベリア航空 | Iberia Airlines |
日本航空(JAL) | Japan Airlines |
マレーシア航空 | Malaysia Airlies |
航空会社名 | 英英 |
カンタス航空 | Qantas Airways |
カタール航空 | Qatar Airways |
ロイヤル・エア・モロッコ | Royal Air Maroc |
ロイヤルヨルダン航空 | Royal Jordan Airlines |
S7航空 | S7 Airlines |
スリランカ航空 | SriLankan Airlines |
アライアンスのメリット
前述の通りアライアンスには様々なメリットを利用者に提供しています。今回は個人的に思う3つのメリットをご紹介します。
搭乗手続きのシームレス化
前述の通り同じアライアンス内の航空会社間では空港での手続きを協力して実施しています。チェックインカウンターの共同利用や手荷物管理、乗り継ぎの際の手続き省略などを実施ています。
特に空港によってはアライアンスごとにターミナルを分けて配置するなどサービスの向上を図っています。例えば成田空港は第1ターミナルにスターアライアンス、第2ターミナルにワンワールドが配置されています。
このようにアライアンスをターミナルごとに集約することによって乗り継ぎやラウンジの相互利用などが円滑に行うことができます。
上級会員の相互優遇
こちらの記事で紹介したとおり航空各社では頻繁に飛行機を利用する優良顧客に対して上級会員の資格を与え、ラウンジ利用や優先搭乗など様々な優遇サービスを提供しています。
そして各アライアンスではアライアンス内で上級会員資格を保有している顧客に対して自社の上級会員と同様のサービスを提供しています。つまりJALで上級会員の方はワンワールド加盟の航空会社でも上級会員として扱われますし、ANAで上級会員の方は同様にスターアライアンス加盟の航空会社でも上級会員として扱われます。
アライアンス | ステータス |
スターアライアンス | Gold Silver Bronze |
スカイチーム | SkyTeam Elite Plus SkyTeam Elite |
ワンワールド | Emerald Sapphire Ruby |
世界一周航空券
あまり利用する機会は少ないかもしれませんが、世界一周航空券というものが各アライアンスから販売されています。アライアンスがなかった時代では利用する航空会社ごとに航空券を取らなくてはいけませんでした。
しかし、アライアンスが登場して一定額で世界一周が可能になる航空券を利用できるようになりました。もちろん一定のルールに従う必要はありますが以前よりも格安でしかも手続きも省略して航空券を購入できるようになりました。
もちろん目的地にアライアンス加盟の航空会社が就航していない場合もありますが、その場合も別切りの航空券を利用することで行くことができます。
まとめ
今回の記事ではアライアンスについて解説しました。アライアンスに加盟す航空会社を利用することによって多くのメリットを得ることができます。目的地に自分がよく利用する航空会社が加盟するアライアンスのが就航している場合は積極的に利用してみるといいかもしれません。
もちろんアライアンスに加盟していない航空会社もありますので価格やサービス、路線などを比較して自分に合う航空会社を選んでください。